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かぜよみの会 ~ 鹿嶋 神栖 潮来 香取 銚子 旭付近 の 文化系サークル~

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ハリウッドで夢見る飲みサーの姫

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ナサニエル・ウエスト作
「いなごの日/クール・ミリオン 」を
読みました。コメディー作品集です。


ナサニエル・ウエストは、1920〜30年代の
アメリカを舞台に活動されていた作家です。

といっても発表したのは4作のみで、彼自身が
生きている間には評価されることはなかったそう。

自動車事故により、40歳目前に奥さんと一緒に
亡くなられたとか。






「いなごの日」は彼の4作目として著された
中篇小説。


内容を端的に表すと、
「ハリウッド在住の 飲みサーの姫に、いろんな
男たちが翻弄される話」。

飲みサーの構成員は、皆ハリウッドという街に
魅せられた若人(20〜30代)ばかり。姫も、有名
女優になりたい(しかし演技の才能は壊滅的)。

男たちは、姫の傍若無人ぶりを知りながらも
惹かれてしまいます。姫も、男たちが自分に
気があることがわかっています。

現代の大学生の飲みサーよろしく、男同士も
表面上は仲良くみえます。






姫(作中の名前はフェイ)のように結構美人でも
必ずしもデビューできないのがハリウッド。

本作のテーマ「アメリカンドリームの裏側に
生きる人々」は、同時代に活躍したスタインベック
(反資本主義系作家)の作品「二十日鼠と人間」でも
描かれています。

ナサニエルはこのテーマを、あくまでユーモア
たっぷり(かなり後味の悪い)に仕上げています。
彼自身が生きた時代のアメリカの雰囲気が、
生々しく伝わってきます(世界恐慌後の庶民生活とか)。


ラストのシーンは、いろいろすごいです。






以下、読んでて考えたこと(一部ネタバレあり)











・フェイ(飲みサーの姫ことヒロイン)が最後まで
主人公の男性と一夜を共にしなかったのは
なぜか?
(父の葬儀代を売春宿で稼いだにも関わらず)

→表向きはイケメン、金持ち好きとされていたが
結局は平凡な男とくっついた。
シンプルにフィーリングが合わなかった?




・フェイの父が亡くなったとき、なぜ主人公が
お金を貸すのを断ったのか?
→後々を考え、借りをつくりたくなかった?




・フェイも精神的に病んでいたのではないか?



・作中に暗喩がいくつか散りばめられている?
→闘鶏シーンの雌鶏(たくさんの雄鶏に囲まれた
全身ボロボロの)は、未来のフェイの姿を
意味する?